2011年4月4日月曜日

ジェネリック医薬品の開発③.

ジェネリック医薬品のコストを考え始めたら、製剤の特徴の話になってしまったので、まず開発行為について考えてみようと思います。

まず、ジェネリック医薬品開発の特徴について考えてみます。ジェネリック医薬品は基本的にお手本(先発製剤)があるので、基本的にコピーすることは可能です。

ただし、ジェネリック医薬品を発売するタイミング(物質特許or効能特許が満了)では、製剤特許や製法特許が残っている場合があります。その場合ジェネリック医薬品メーカーは、それらの特許を避けて製剤を作ることになります。そうなると、ファーストジェネリックを目指して無理して開発するため性能が落ちるなんて可能性もあります。

いかに開発するか、つまり製剤設計がコストに与える影響は製造プロセスの効率化を行うよりも大きいと考えます。製剤を開発する場合、最初に行うことが物質特許以外の特許の有無です。

例えば、A製剤の製法特許として、撹拌造粒法、流動層造粒法がある場合、ジェネリックメーカーとしては、直接打錠法しか選択肢がなくなります。コスト面で考えると、直接打錠法は混ぜるだけなので非常に楽チンかつ低コストなのですが、造粒をしないということは原薬のロット間バラつきに受ける影響が大であるため、原薬メーカーに粒度の指定をする必要があります。造粒をしないということはまた、ヒトの手が加わる部分が少ないため、スケールアップをしてうまくいかない場合、手を加えることが出来るパラメーターが非常に少ないということが問題として挙げられます。造粒する場合、製造条件にある程度幅を持たせることが出来るので、流動層造粒であれば風量を変えたり温度を変えたり、撹拌造粒なら回転数を変えたり、ということが出来、スケールアップがしやすいものなのです。ビスホスホネート製剤がこういう事例にあたりますね。

次にやることは先発製剤の分析です。先発製剤の添加物としてどんな成分が使用されているかは、インタビューフォームを見れば分かるため、どんなものを使おうかという大体の予測が出来ます。例えば、ノバルティスファーマのディオバンだと「ディオバン錠 40mg、ディオバン錠 80mg、ディオバン錠 160mg:添加物として8成分を含有する。ヒドロキシプロピルセルロース、セルロース、無水ケイ酸、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ヒプロメロース、マクロゴール、酸化チタン」との記載があります。この処方を見たとき、錠剤の設計を行っている人であれば、核錠は、主薬、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロースで造粒して、無水ケイ酸、ステアリン酸マグネシウムを混合して打錠して、そのあとフィルムコーティングかな、ということが分かります。

ここでジェネリック企業が考えることとして、2つの方向性があります。
・先発製剤のコピーとして設計する
・自社の製剤技術を活かして、先発製剤にない製剤として設計する
よく聞く話として、先発製剤と処方(添加物成分)が同じでないと血中濃度が変わるから効き目が異なる、がありますが、製造側から考えると全く同じ成分を使っていても製造方法如何で血中濃度が変わるので、あんまりアテになりません。しかし、実際に判断の基準となるのは、インタビューフォームに記載されている(文字として識別される)処方となるため、薬剤師の判断としてそれを根拠にするのも仕方ないことかとも思います。

ボクが開発をしていた当時は先発製剤のコピーが受けたように思いますが、最近の営業の話を聞いていると、コピーよりも高付加価値化されたものの方が受けがよいという話も聞きます。まだ、どっちがmajorityということでもないんでしょうかね。

ちょっと長くなったので小休止。次は共同開発について考えます。