2020年5月17日日曜日

世界最高額の医薬品の価格

日本でもとうとう薬価がつきました。世界最高金額の医薬品「ゾルゲンスマ®(Zolgensma)」一般名はオナセムノゲン アベパルボベク(onasemnogene abeparvovec)。
日本でのお値段167,077,222円(約1.67億円)。アメリカでのお値段は約2.3億円()です。この薬が対象としているのは、脊髄性筋萎縮症という難病で、寿命も短くなる致死性の病です。
この金額はどのように算出されているのでしょうか。今回も変わらずICER-reviewの評価をベースに解説します。
現在、脊髄性筋萎縮症の薬剤といして承認されているのは2製品。Biogen社のSpinraza®(nusinersen)とNovartis社のZolgensma®です。この2製品のおおまかな違いとして挙げられるのは、
Spinraza:発症前~発症後の患者が対象。4か月毎に髄腔内に投与
Zolgensma:発症前の患者が主な対象、1度きり、で静脈内に投与
かと思います。
では、細かいデータを各社の臨床試験データから紐解いていきましょう。まずはInfantile-Onset(Type I)のSMAの臨床試験から。Biogenは下記に示すRCT臨床試験を行っており、Type I、Type II/III、の患者さんを対象にしていることが分かります。他方、Novartisは、Type Iの患者さんを対象にしています。Biogen社はプラセボコントロールに対し、Novartis社はオープンラベルシングルアーム。
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最初にSpinrazaとZolgensmaの基本情報の比較です。どちらの臨床試験においても、生まれてから2か月程度で病気が発症し、治療を開始したのは3-5か月後です。
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結果です。本文中からの引用ですが、ENDEARでは、Sham群の患者さんの平均余命が22週間(約半年)であった一方、Spinrazaでは73週間と大幅に延命できています。Zolgensmaにおいては、すべての患者さんで投与から2年間(108週間)以上の生存が確認されています。また、機能面においては、Sham群では頭を動かしたりできる患者さんがゼロなのに対して、SpinrazaやZolgensmaでは座ったり立ったりするほどまで回復する患者さんが認められます。このことからも、これらの医薬品には意味があることが示されます。
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次にLater-Onset(Type II/III)のSMAに対する臨床試験結果です。こちらはZolgensmaのデータはなく、Spinrazaのみです。(試験名:CHERISH)。投与群で3ポイント以上の改善があることから、意義があるという結論となっています。
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表で示されている指標はHFMSEというもので、Spinrazaのウェブサイトでも紹介されています。https://www.spinraza.jp/ja-jp/homepage/resources/HFMSE.html
両治療薬に関する懸念点としては、長期間の投与実績がないので、登記投与の場合の安全性について、Zolgensmaはシングルアーム試験でかつ12例の投与症例数しかなく、ヒストリカルコントロールと比較する場合に効果が強調されることや統計上有効と判断するためのサンプルサイズが小さい、との内容です。歴史的にはSMA患者さんは2歳で死亡するといわれておりますが、最近は人工呼吸器や栄養学的なサポートにより、現時点では2歳時点での死亡率は30%となっています。Zolgensma投与群においては、すべての患者で2歳までは生存が確認され、かつ人工呼吸器を装着していない、ということから有効性が示唆されますが、やはり対照群は必要、という見解です。
下記表において、どの患者さんにどの薬剤が有効か、ということに対して示されています。ZolgensmaはType I SMAのみ有効、SpinrazaはType I、Type II/IIIに有効、という結論です。有効性からもZolgensmaは適応年齢を2歳以下と限定している点がSpinrazaと異なります。
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さて、気になるお値段の計算です。Type I SMAについて、SpinrazaとZolgensmaが比較されています。ICERの評価では、得ることができるQALYはZolgensmaの方が高いことが分かります。生存年もZolgensmaはSpinrazaの倍以上の延命効果があることが示されています。使用した金額はSpinrazaが2.23百万ドル、Zolgensmaが2百万ドル(どちらも約2億円強)
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しかしながら、どちらの治療においてもQALYあたりのコストはICERが許容する15万ドル/QALYを超過した結果となっています。
Type II/IIIについては、Spinrazaのみの評価ですが、延命効果はほとんど期待できず、QALYがかすかに増加する、という結果です。この結果だけみるとBiogenの担当者は到底納得できない結果になるでしょうね。
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QALYあたり15万ドルを超えることになってしまいましたが、どのように落としどころを付けるのでしょうか。結論からいうと、SMAのような超希少疾患については、15万ドル/QALY以上の閾値をもうける、ということです。左に記載のメーカー希望小売価格に対して、15万ドル/QALYで計算すると、それぞれ64,800ドル、899,000ドルとなり、Spinrazaに至っては希望価格の8割引きとコメントされてしまっています(希望価格は38.25万ドル)。
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そこで、ICERとしては、5万ドル~50万ドル/QALYでの分析をそれぞれの医薬品で評価を行い、価格設定を正当化しているようです。
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Biogenの担当役員からは、この解析結果が好ましくなかったようで、恨み節ともとれるパブリックコメントが巻末に記載されています。
驚くべきことに、Novartisは「製品価格、5億円」が適正な価値と述べていましたが、トランプ流の交渉なのか特に2億円という金額に落ち着き特にコメントはしていません。また、臨床試験サイズを小さくすませて承認を取得する、などなど個人的にはNovartis社に学ぶことはたくさんありそうです。
本noteは、https://icer-review.org/material/sma-final-evidence-report/からの引用です。

2020年5月11日月曜日

Cystic Fibrosis(嚢胞性線維症)治療薬のお値段

まずは嚢胞性線維症について。CFTR(cystic fibrosis transmembrane conductance regulator)の遺伝子異常のため、正常な塩化物イオンチャネルを形成するたんぱく質が作られないことにより、全身の粘膜の塩化物イオンの輸送能力が弱いため、生まれて間もない頃から、気管支、消化管、膵管(用語解説参照)などが粘り気の強い分泌液で詰まりやすくなり多様な症状を表す病気です(図)。ほぼ全ての患者さんが。肺炎や気管支炎を繰り返します。(引用:https://www.nanbyou.or.jp/entry/4531)日本を含むアジア人には非常にまれな病気ですが、欧米人の場合は3千人に1人の割合で発症するといわれています。
ですので、嚢胞性線維症は日本ではあまりなじみのない病気ですが、欧米では深刻な疾患です。嚢胞性線維症に限りませんが、人種によって生じる遺伝子疾患は比較的存在しており、日本向け、欧米向けで開発戦略が分かれることもしばしばあります。
さて、嚢胞性線維症(CF)治療薬の話をしますと、今回ICERが評価対象としたのは、Vertex社(ボストンのバイオベンチャー)のトリカフタ(Trikafta)です。この薬剤は、Elexacaftor/ Tezacaftor/ Ivacaftorという3つの化合物の合剤となり、語尾が-caftorの化合物が3つ入っているのでTrikafta、という命名と思われます。Elexacaftor/ Tezacaftor/ IvacaftorはいずれもCFTR調節薬と呼ばれるカテゴリーですが、タイプは2種類あります。Potentiatorと呼ばれる化合物はIvacaftorで、CFTRたんぱく質(イオンチャネル)の開口確率を上昇させる役割があります。残りのCorrectorと呼ばれる化合物(lumacaftor, tezacaftor, and elexacaftor)は、CFTRたんぱく質を正しくフォールディングしたり、細胞膜へ輸送させる役割を持ちます。今回の評価対象はトリカフタですが、Vertex社はこれまで、Kalydeco(ivacaftor)、Orkambi(lumacaftor/ivacaftor)、Symdeco(ezacaftor/ivacaftor,)の単剤と2種類の合剤を発売しています。
基礎的情報ですが、CFによる米国の病院コストは約1200億円との数字があります。(2013年)
次に、薬剤の薬効評価です。臨床的評価指標は、ppFEV1(percent predicted forced expiratory volume in one second: 最大吸気位(これ以上息を吸うことができない程息を吸い込み、肺がぱんぱんの状態)から、できるだけ速く息 を吐き出(努力呼出)したときの、最初の一秒間に吐き出すことのできた息の量のことの予測値)です。既存薬のOrkambi、Symdecoと比較して、Trikaftaではかなりの改善が認められています。
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同様の指標として、生活の質質問票改訂版でも改善が認められています。
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イオンチャネルが正常に活動すると塩化物イオンが取り込まれるので、汗の中に含まれる塩化物イオンの変化量を指標にしています。
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こういったデータは臨床試験の結果を用いることが多いので適切な評価項目を設定することは適切な医薬品価格評価につながるということを理解しておくとよいです。以下の図では、BSC(Best Supportive Care)あるいは既存薬と比較した場合の各薬剤の有用性について評価されています。
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この結果を踏まえて、最適な治療戦略について下記示されています。最初からTrikaftaを使用するのではなく、各遺伝子型に応じて治療戦略が異なることが示されています。
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気になるお値段です。繰り返しになりますが、アメリカの医薬品価格は政府ではなく各製薬企業が決めることができますが(イメージ例:希望小売価格)、実勢価格は保険会社との交渉によるリベートが含まれますので、これらの価格よりは安いですし、患者が負担する金額も上限金額(2020年の場合は約80万円/年)で収まるはずです。下記は希望小売価格ですが、面白いことに単剤~合剤の価格をほぼ同一に設定している点がユニークだと筆者は感じます。しかし1日8万円近い価格であり、単純に年額換算すれば3千万円を超えるお値段です。
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こちらが薬効と合計コストです。BSCと比較するといずれも5年程度の余命が伸びることが示されていますが、そのためのコストが6-7億円、1年余命をのばすのに1.2億円程度の費用(希望小売価格ベース)が見込まれることになります。
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米国の仕組み上、いくら余命を伸ばすことができるといっても青天井で医薬品価格を設定してもよいわけではなく、1QALYあたり150,000USDという上限値が設定されています。(超希少疾患の場合は500,000USD)。その基本ルールに基づくと、トリカフタは患者数が1万人を超えるためQALYあたりの上限は150,000USDがベースとなるはずで、その場合の価格は年額79,200USDとの計算結果が示されており、希望小売価格である311,700USDと比較すると大きな乖離があることが分かります。このことからICERはVertex社へのメッセージとして、希望小売価格から約80%のディスカウントが適切である、との結論付けを行っています。
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2020年4月27日月曜日

片頭痛治療薬の値段分析について

まずは2020年2月25日にレポートアップされた片頭痛治療薬の価格計算についてみていきましょう(原典はこちら:https://icer-review.org/topic/acute-migraine/)。最初にDisclaimer的なパートがあり、ICERへのファンディングについて、19%は製薬企業/保険会社/PBMから得ている旨、きさいされています。また、その中でも片頭痛治療薬として今回対象とするものには、Allergan社のみファンディングメンバーに入っていますと、ということが明確に記載されています。(Allergan社にプラスの配慮なんてしてませんよ、という意思表示です→結果はどうなっているでしょうか?)
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まず、エグゼクティブサマリーから入ります。ちなみにレポートは全部で249ページです。この疾患の患者人数について記載があります。片頭痛は、アメリカの12-15%が罹患し、人口にして4千万人が悩んでいる、ということが示されています。次に、これまでの治療手段として、トリプタン系、と言われる5-HT(ヒドロキシトリプタミン)1b/1d受容体アゴニスト(作動薬)が主流であった、ということが示されます。トリプタン系は、錠剤、点鼻、皮下注射といった手段で投与されることがあるそうです。しかしながら、長期間の投与にて効き目が減弱する事例や、心血管系の既往がある患者さんには禁忌であるという事情があり、新たなタイプの片頭痛治療薬が求められている、というニーズについて記載されています。新たなタイプとして挙げられているのは、「カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)阻害剤("gepant"クラス)」と「5-HT1f作動薬("ditan")クラス」が開発されてきました。CGRP阻害薬としては2種類あり、Allerga社の「Ubrogepant(製品名Ubrelvy)」と「Rimegepant(FDAレビュー中(2/25日時点))」があります。また、5-HT-1f作動薬としては2019年10月11日にFDA承認を取得した「Lasmiditan(製品名Reyvow)」があります。今回はこれらの3製品の医療価値の比較、ということになります。genantやditanは、triptanと異なり、血管収縮作用がないことが相違点、として挙げられています。
次に、患者さんや患者団体との議論について共有されています。往々にして製薬会社が臨床試験のエンドポイントにする指標は患者さんや患者団体の求める指標と異なる場合があるので、ICERとしては患者さんが何を治療薬に求めているのか、ということを明確にする必要があります。特徴的なコメントとしては、「処方薬や非処方薬があるが、片頭痛の発作を抑えられない」「triptanは効くこともあるが大概の患者で効き目が悪い」「患者が片頭痛治療薬ではなく、オピオイドやバルビツールなど副作用の多い治療法を選択することがある」といった内容が挙げられており、治療薬が開発されるメリットとして「片頭痛は思春期に発症するため、アカデミックな才能を発揮できる」「重篤な発作はQOLへの影響が大きい」「いつ発作が起こるかわからない状況は不安を」「慢性的な片頭痛は家族や友人との人間関係に影響する」などなど、いろいろなことが書かれております。
さて、ここからが本題ですが、臨床ベネフィットはどのように評価されるのでしょうか。参照データは各化合物臨床試験データとなります。それぞれ、lasmiditan(第2相×1本、第3相×2本)、rimegepant(第2相×1本、第3相×3本)、ubrogepant(第2相×1本、第3相×2本)の結果と、過去の23本のtriptanの結果が比較対象として用いられているようです。
最初の臨床ベネフィットは「投与2時間後の痛みがないこと」あるいは「痛みの緩和」が設定されています。臨床試験結果内容は下記表のように示されておりますが、詳細は割愛します。
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さてさて、このような治療効果がどのような値段設定に反映されるのでしょうか?すでに発売されている医薬品は販売価格(WAC)が設定されておりますので、その数値が引用されています。下図参照。
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いよいよ本題です。Model Inputとして、新薬3種類、旧来のtriptan系、既存治療法(混合治療)について、その価値が評価されています。手法としては、EQ-5Dを用いてることが書かれています。その結果として、Usual Careを比較対象とするPopulation1と各種triptan系とを比較するPopulation2にて結果がまとまっています。
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Population1の解析結果では、新薬3種類で得られるQALYが、1.8252あるいは1.8295である、Usual Careは1.8142とその差は「0.0110」「0.0153」、延命効果をはかるLife Yearsは差がゼロとの結果です。
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Pupulation2の解析結果では、新薬3種類にて得られるQALYが「1.8252」「1.8222」「1.8221」に対して既存ジェネリック薬で得られるQALYは「1.8264」「1.8293」と新薬で得られるベネフィットを上回っている計算結果となっています。これらの解析結果をまとめた表を以下に示します。
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その結果、Pupulation1では、gepant系の2種類の医薬品が比較的良い結果(1QALYを得るのに約4万ドル(約450万円))となり、Lasmiditanはあまりよくない結果(1QALYを得るのに約18万ドル(約2千万円))です。一方。Pupulation2では、いずれの事例もDominatedとなり、新薬の価値が下回っている、という結果となっています。
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これらの結果を受けて、Pupulation1をベースに感度分析、シナリオ分析、閾値分析が行われています。Pupulation2においては、既存のtriptan系の方が効果がよい、という結果が出てしまっていますので、分析対象はPupulation1(心血管リスクがあり、triptan系を服用できない患者)を対象としています。結果としてはLasmiditanはgepant系と比べて効果が低く、費用対効果に劣る、という結果であり、gepant系を推奨する内容となっています。推奨価格としては、QALY当たりの金額を5万ドル~15万ドルのシナリオについて算出されていますが、年間30万円~50万円程度の幅が本レポートから導き出されています。
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そして、すでに発売されている医薬品の値段と比較され、どの程度の値引きがふさわしいか、といった製薬会社的にはうれしくない提案までされております。
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最後に委員会メンバーでの投票があり、「治療をしない場合と比較して新薬を投与する場合にベネフィットがあるか→Yea」「新薬間に治療効果の差があるか→No」「新薬がtriptan系と比較して優れた治療効果があるか→No」といった結果となっております。
そういった結果についてもパブリックコメントが受け付けられていまして、リリーからは、Erin Doty, MD氏(Senior Medical Advisor, Migraine and Headache Disorders, Eli Lilly)からのコメント、AllerganからはCMOであるMitchell Mathis, MD氏(Vice President, Chief Medical Officer, CNS, Allergan)からのコメントが公開されています。どちらも恨み節ではなく、比較的真摯なコメントやベネフィットについての主張しています。
これらの分析は治療効果をどのようにQALYへ換算するかというのが興味深いところではありますが、QALYの計算過程に関する詳しい情報は残念ながら解説はされていません。

2020年4月21日火曜日

ICER(アイサー)とはどんな組織か?

医療経済学の中でICERというと、普通は「Incremental cost-effectiveness ratio」というのが出てきますが、今回取り上げるのは「Institute of Clinical and Economic Review」という組織のことです。
Incremental cost-effectiveness ratioというのは、前回のQALYのときにも触れた概念なのですが、1QALY得るのにいくらかかるのか、ということと思っていただければよいです。
さて、Institute of Clinical and Economic Reviewですが、米国マサチューセッツ州ボストンにある独立研究機関でして、設立は2006年です。2006年頃というのは、抗体医薬など生物学的製剤が続々と市場に投入されていた時期なので、そういった需要があったのでしょう。最近の米国では希少疾患の医薬品が増えていることもあって医薬品の価格が高騰しています。記憶に新しいのは、Novartis社(創製はAvexis社)が承認を取得した「ゾルゲンスマ(Zolgensma)」という脊髄性筋萎縮症(Spinal Muscular Atrophy(SMA))の遺伝子治療薬で、価格が2億円!!です。こういった2億円という価格が適正なのか、もっと高くてもいいのか、それとも安い方がよいのか、といった価格設定は製薬会社自身ではなく、やはり第3者が算出した方がよいよね、という考えは皆さんにもなじむんじゃないか思います。ですので、第3者の視点から価格を計算するICERは、「watch dog of drug pricing(医薬品価格の番人)」と呼ばれています。最近の傾向ですと、自由薬価の国アメリカ、といえどICERが計算した金額より高い価格を設定する製薬会社はなく、先ほどのNovartis社のゾルゲンスマもICERが2億円が適正価格だ、とのレポートを出したので2億円になっています。そうじゃなければ5億円の販売価格になっていた可能性大です(ゾルゲンスマの事例は近い将来取り上げる予定です)。
ただ、こういった独立機関を運営するにもお金は必要です。どういったお金の出所になっているのか、そういった内容もすべて公表されています。
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大半は、非営利の財団からのお金で賄われていますが、製薬会社からのFundingもあります。面白いのは、Allergan、Alnylam Pharmaceuticals
AstraZeneca、Biogen、Boehringer-Ingelheim、Editas、Genentech、GlaxoSmithKline、Janssen、LEO Pharma、Mallinckrodt Pharmaceuticals、Merck & Co.、Novartis、Prime Therapeutics、Regeneron、Sanofiといった名前を連ねている会社は比較的高額医薬品を出している企業が多いということです。Editasはゲノム編集のスタートアップ企業ですが、まだ上市した製品がないにもかかわらず、将来的な価格設定に備えてか、fundingをしています。(Fundingが有利な価格設定に結び付くわけではありませんが、どういった計算根拠となるのか、会議への参加や傍聴ができれば、エンドポイントの設計など臨床開発戦略にも活かせるのかもしれません)。
次回は、ICERが採用しているの価格計算フレームワークについてご紹介する予定です。

2020年4月10日金曜日

QALY(クォリー)とは何ぞや?

Quality-adjusted life year, QALY、日本語で言うと、質調整生存年(しつちょうせいせいぞんねん)のことで、生きている期間において量と質の2点を評価する手法のことです。医薬品の価格や医療行為に対しての費用対効果を経済的に評価する技法として用いられています。
これだけきいてもわからないと思うので、具体的な話をしていきたいと思います。前提として、1QALYは、完全に健康な1年間に相当します。もしある人の健康が完全ではないならば、その1年間は1以下のQALYとして算定され、死亡すれば0QALYと算定されます。いくつかの状況ではマイナスのQALYも算定され、それはその健康状態が「死亡よりも悪い」ことを意味します(どんな状況でしょう、きっと生きているのが辛すぎる状況でしょう)。
もう少しかみ砕いてみると、生活の質、というとき、Quality of Life(QOL)という言葉があります。QOLが上がる、QOLが下がる、こういった使い方をしますが、QALYは、QOL×時間(年)であらわされるものです。QOL自体は上がったり下がったりするもので、0~1の間で計算されます。新しい家を買って、快適になったときもQOLは上がりますが、今回、対象とするQOLは自身の健康状態に関してのみで、それ以外の要素は反映されません。
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皆さんが、病院へ行こう、薬を飲もう、というモチベーションは、「元気に」「長く」生きたいから、という理由に他ならないと思います。そこで医療行為や薬に対してお金を払う訳ですが、その効果に対して、いくらの金額がが妥当か、というのが医療経済学の考えで、治療しない場合が水色、治療する場合に黄緑色分、いいことがある、その金額を計算しよう、というスタンスです。日本では人の命に値段をつけるなんて、という考えが主流なので使われていませんが、欧米ではQALYがどの程度向上するのか、をベースに医薬品価格を決めることがあります。
ただ、そもそもQOLを0~1の間で示すって簡単そうですが、どうやってやるのでしょうか、というのが新たな疑問かと思います。QOLを計算する手法はいろいろありますが、最近よく使われるのは、EQ-5D-5L (EuroQOL 5 dimensions 5-level)です。EQはEuroQOL、というヨーロッパの団体が作成している基準でして、5つの項目(Dimension)、5つの段階()level)、で決めます。移動の頻度、身の回りの管理、普段の活動、痛み/不快感、不安/ふさぎ込み、という項目を5段階でヒアリングして確定します。(参照:池田 et al.:保健医療科学 2015 Vol.64 No.1 p.47-55)
あとは、得られるはずのQALYに対していくらお金を払うのか、という値付けの問題ですが、民間保険が中心のアメリカは、100,000~150,000ドル(約1千万円~1千5百万円)、国民皆保険のイギリスは20,000~30,000ポンド(約260万円~400万円)となり、国によって全く異なる値付けと思います。このようにアメリカの市場においては、差別化が可能そうな医薬品に関しては高く値段設定ができるので、様々な製薬会社がまずアメリカ市場へ参入しようと考えるわけです。次は、アメリカの薬価の具体的な事例について書いていければと思います。

2020年1月2日木曜日

2019年の米国FDA承認医薬品

昨年米国に拠点を移した、ということで米国の製薬業界について書いていこうかと思います。日本にいると、製薬業界の研究職の魅力や将来性についてネガティブな意見を聞くことが多く、製薬業界の将来が暗いようなイメージを受けます。また、バイオバイオしていて日本が従来得意であった低分子創薬は無理になった、というふうなこともちらほら聞きます。

ただ、2019年のFDAの承認するは48化合物(詳しくはこちら)。
驚くのはそのうち23個が低分子化合物。

中身を見ていくと、日本企業創製の化合物が5個。
Enhertu:fam-trastuzumab deruxtecan-nxki(第一三共):乳がん
Dayvigo:lemborexant(エーザイ):不眠症
TissueBlue:Brilliant Blue G Ophthalmic Solution(デウエスタンセラピテクス):
Fetroja:cefiderocol(塩野義)
Nourianz:istradefylline(協和キリン)

日本企業が承認を取得した化合物が
Padcev:enfortumab vedotin-ejfv(アステラス/シアトルジェネティクス)
Turalio:pexidartinib(第一三共/ Plexxikon)

また、最も多く承認を取得したのはNovartisでした。
Egaten:triclabendazole:
Mayzent:Siponimod:再発性多発性硬化症
Piqray:alpelisib:乳がん
Beovu:brolucizumab–dbll:進出型加齢黄斑変性
Adakveo:crizanlizumab-tmca:鎌状赤血球
NMEには上がってませんが、Avixis創製のZolgensmaもNovartis。

韓国企業であるSK社、中国企業であるBeigene社もそれぞれ
・Xcopri(cenobamate)
・Brukinsa(zanubrutinib)
の承認を取得しており、今年もアジア企業の動向から目が離せません。

参考まで、まとめた資料はこちらから

2019年11月9日土曜日

米国に拠点を移しました。

しばらくブログを放置していましたが、夏に米国へ移住しましたので、ぼちぼち書いていこうかと思います。
9月から新学期が始まるので、近所にあるYale大学のカレッジ(ハリーポッターに出てくるグリフィンドールとか)毎に新入生を受け入れる仕組みがあります。知りませんでしたが、米国の大学の学部生は一人暮らしをして通うというものではなく、有無を言わさずレレッジに入る必要がある、ということだそうです。

さて、私のミッションと言いますと、とある医薬品の米国展開のために赴きました。こちらでの役割は臨床試験と薬事であり、いわゆる製薬会社の根幹となる役割と思っています。これから薬事コンサルやFDA、CROなどとの付き合いも始まってくると思うのでとても楽しみな毎日が待っています。ブログを復活させるに当たって、米国市場の製薬、医療機器、健康保険、ベンチャー(スタートアップ)、投資、を重点テーマにしてみます。