2020年4月10日金曜日

QALY(クォリー)とは何ぞや?

Quality-adjusted life year, QALY、日本語で言うと、質調整生存年(しつちょうせいせいぞんねん)のことで、生きている期間において量と質の2点を評価する手法のことです。医薬品の価格や医療行為に対しての費用対効果を経済的に評価する技法として用いられています。
これだけきいてもわからないと思うので、具体的な話をしていきたいと思います。前提として、1QALYは、完全に健康な1年間に相当します。もしある人の健康が完全ではないならば、その1年間は1以下のQALYとして算定され、死亡すれば0QALYと算定されます。いくつかの状況ではマイナスのQALYも算定され、それはその健康状態が「死亡よりも悪い」ことを意味します(どんな状況でしょう、きっと生きているのが辛すぎる状況でしょう)。
もう少しかみ砕いてみると、生活の質、というとき、Quality of Life(QOL)という言葉があります。QOLが上がる、QOLが下がる、こういった使い方をしますが、QALYは、QOL×時間(年)であらわされるものです。QOL自体は上がったり下がったりするもので、0~1の間で計算されます。新しい家を買って、快適になったときもQOLは上がりますが、今回、対象とするQOLは自身の健康状態に関してのみで、それ以外の要素は反映されません。
無題
皆さんが、病院へ行こう、薬を飲もう、というモチベーションは、「元気に」「長く」生きたいから、という理由に他ならないと思います。そこで医療行為や薬に対してお金を払う訳ですが、その効果に対して、いくらの金額がが妥当か、というのが医療経済学の考えで、治療しない場合が水色、治療する場合に黄緑色分、いいことがある、その金額を計算しよう、というスタンスです。日本では人の命に値段をつけるなんて、という考えが主流なので使われていませんが、欧米ではQALYがどの程度向上するのか、をベースに医薬品価格を決めることがあります。
ただ、そもそもQOLを0~1の間で示すって簡単そうですが、どうやってやるのでしょうか、というのが新たな疑問かと思います。QOLを計算する手法はいろいろありますが、最近よく使われるのは、EQ-5D-5L (EuroQOL 5 dimensions 5-level)です。EQはEuroQOL、というヨーロッパの団体が作成している基準でして、5つの項目(Dimension)、5つの段階()level)、で決めます。移動の頻度、身の回りの管理、普段の活動、痛み/不快感、不安/ふさぎ込み、という項目を5段階でヒアリングして確定します。(参照:池田 et al.:保健医療科学 2015 Vol.64 No.1 p.47-55)
あとは、得られるはずのQALYに対していくらお金を払うのか、という値付けの問題ですが、民間保険が中心のアメリカは、100,000~150,000ドル(約1千万円~1千5百万円)、国民皆保険のイギリスは20,000~30,000ポンド(約260万円~400万円)となり、国によって全く異なる値付けと思います。このようにアメリカの市場においては、差別化が可能そうな医薬品に関しては高く値段設定ができるので、様々な製薬会社がまずアメリカ市場へ参入しようと考えるわけです。次は、アメリカの薬価の具体的な事例について書いていければと思います。

0 件のコメント: